ごあいさつ
日本の指導者の皆様へ
小林裕和先生の合氣道に関心を示された皆様に、この手紙をもって私からのメッセージとしたいと思います。
私は25年にわたって先生の弟子であり、また、受け、通訳、腹心だったことは皆様おそらくご存じかと思います。毎年数か月の間、私は先生に付き従い、アシスタント、聞き役、運転手を務めておりました。
エジプトで王家の谷を訪れた後、先生は初めて、その数年後に実現することになる国際合氣道研修会の設立について私に話をされました。国際合氣道研修会は1998年1月に設立を発表しましたが、設立までの構想を練り上げるのに約10年を費やしました。1998年4月、大阪で会合が開かれ、先生の同席のもと研修会の内規の読み合わせが行われました。設立メンバーの前で、先生にその内規を正式に承認していただきました。
エジプトで研修会設立の話をした時すでに、先生は自分の死後は日本へ指導をしに来てほしいと私に頼み、その後数年、私にたびたびその依頼を繰り返していました。当時の状況からして、先生は自らの合気道の技の独自性が失われていくのを危惧していたのではないでしょうか。
先生亡き後、皆様は忠実さをもって先生との思い出を偲ばれたことと存じます。ですが、先生の技についてはその後どうなったでしょうか。
私は先生の言葉を守るため、できるだけ多く日本へ赴き指導を行い、先生の技とその独自性を伝え、発展させようと心に決めました。先生の技がいかに卓越したものであるか、また、先生の技がどのように合氣道の倫理と力強い哲学を伝えるか、これらを理解した人達の力になれたらと私は考えております。
小林先生は並外れて知的な方でした。また、通常ではない精神運動能力と、調和のとれた動きに対する生まれながらの感覚を備えていました。植芝盛平師範に忠実であることは議論の余地がなく、それだけに、小林先生は師から受け取った宝を昇華させ、同時にそれを超越したのです。
小林先生が発展させた合氣道においては、武道としての有効性および精神運動能力を向上させる効果が実証されています。先生の合氣道はまた、各々が内なる平和に至るための最適な道です。この内なる平和こそ、世界平和に不可欠であると翁先生が述べていたものなのです。
私の目的は他の組織と張り合ったり、よその門下生を獲得しようというものでは断じてありません。
私の提案に応じようとする方々がいるとしても、東京本部および武育会の後ろ盾を受け、自分達の道場での稽古を続けるべきです。私自身は金銭的な見返りを含め一切何も求めておりません。小林先生の素晴らしい技が広がっていく、そう考えるだけで私はうれしく、それで十分なのです。
大日本小林裕和合氣道振興機構の設立を望むのも、ひとえに小林先生が私に与えてくれたものを日本に返し、小林裕和という名が合氣道を実践する者達の世代を超え、彼らに健康、自由、幸福をもたらすものとなることを願うためです。
振興機構設立のプロジェクトを進めるにあたり、皆様のご理解を仰ぎ、ご厚意およびお力添えをいただけますと幸甚に存ずる次第です。
フランス合氣道アカデミー
國際合氣道研修會小林裕和流 名誉会長
大日本小林裕和合氣道振興機構 総裁
コニャル・アンドレ